2020年刊行で注目の邦訳アメコミ
大学のレポート書いたりしてる影響で文体が変わってしまっていますが、お気になさらず。
スーパーマン:イヤーワン
本作は正史とは切り離された物語が描かれる作品を発売する「BLACK LABEL」(以降ブラックレーベル)から刊行された本作は「バットマン:ダークナイト・リターンズ」(以降「DKR」)等のライターを務めたフランク・ミラーで、スーパーマン関連のアートを担当することが多いジョン・ロミータJrによる新解釈のスーパーマンのオリジン(誕生秘話)である。
賛否両論の声が上がり気味な作品だが、個人的には楽しめた作品の一つ。前述の「DKR」はDCEUシリーズの一つである「バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生」(以降「BVS」に登場するバットマンのイメージに大きく影響を与えているが、本作ではなんと「BVS」を逆に意識したような場面が登場し、個人的になかなかにテンションが上がった。フランク・ミラーの描くバットマンは性格がクソ。笑
何度も言うようだが、これは正史世界(ニューアース、プライムアース)を舞台にした作品ではないため、本作で描かれる「スーパーマンになる前のクラーク・ケント」はあくまで「DKR」の世界の彼の物語であるため、読む際は正史のスーパーマンとの矛盾など粗探しをせず、「それはそれ、これはこれ」といった正史世界とは切り離して楽しんで欲しい一作となっている。
ガールズ・レボリューション
本作は若者の読者層に向けたコミックを刊行する「DC グラフィック・ノベル」シリーズの作品で、正史世界では精神科医でジョーカーと出会って惚れて彼氏の影響受けてヴィランに…という重い女っぷりを発揮していたが、本作ではそれとは全く異なる環境でのハーレイ・クインのオリジンを描いている。
本編途中、ジョーカーを名乗る謎の少年が登場するが、その正体はそこそこ衝撃を受けるかもしれない。また、本作はブルース・ウェイン/バットマンのいない世界では決してないので、ブルースがどこのシーンに出ているかも注目の一作。
個人的には、ハーレイがトランスジェンダーの女性たちに囲まれて暮らしていくシーンで、ハーレイがトランスジェンダーへの差別精神が全くないところが素晴らしい。そんなハーレイと比べて、日本の自称フェミニストもは名ばかりの実態ミサンドリスト共ときたら…トランスジェンダーへの差別精神を無くすべきである。
ハーリーン
こちらは、ブラックレーベルから刊行された作品で、精神科医だった頃のハーリーン・クインゼルがジョーカーに心酔していき、やがて自分も道化師となる道を選ぶストーリーとなっている。
いわゆるハーレイ・クインのオリジンの最新版、とも言うべき内容ではあるが、本作はブラックレーベルであり、正史を舞台とした作品では無いため、むしろ何が起こるかわからないハラハラ感がある。
現行のハーレイ・クインはジョーカーと破局した路線が一般的であるが、本作ではそのような現行の設定とは切り離された世界観が舞台、または過去が舞台であるため、ジョーカーとハーレイの愛物語を楽しむことが出来るが、ナレーションのハーレイの口振りからすると現在は破局を迎えているのかもしれないと解釈できる。
余談ではあるが、ハーレイとジョーカーが破局したというこの路線はコミックが映画の展開を寄せたわけではなく、コミックが先に行ったもので映画がそれの影響を受けているだけであるため、映画で人気の要素をコミックに輸入するな〜という議論とは無関係なので、知ったかぶらないようにお願い頂きたい。
偽りの帝国
ブラックレーベルでもグラフィックノベルシリーズでもない、れっきとした正史のタイトルである本作はスコット・スナイダーがメインライターを務めるジャスティス・リーグの続刊であり、その根底に「メタル」シリーズがある。
「メタル」はバットマンのライターを堪能していたスナイダーならではのライティングが光るバットマンファンとしては必読の一冊となっている上、スナイダーの描く物語を楽しむことが出来たが、その続編である「ジャスティス・リーグ」の1巻はイマイチよくわからない総和体なる物質を巡った戦いがイマイチハマれなかったが、2巻はアクアマンの映画公開記念のミニシリーズが収録内容の大半を占めていたが、正直言うとジェフ・ジョンズがライターを担当していた頃の「ジャスティス・リーグ」のエピソードの一つである"アトランティスの進撃"の方が面白かった。
1〜2巻のおかげで期待値が低い状態で読んだのだが、これが普通に面白くてびっくり。サナガー星での事件簿がかなり良かった。ジャスティスリーグのメンバーには輪廻転生を繰り返すホークガールというキャラクターがいる。ホークガールは現在、ケンドラ・ソーンダースという黒人女性に転生しているが、その転生前であるシェイエラ・ホルが登場するのだ。何故、ケンドラとシェイエラが同時に存在するのか?その答えは、予想もしなかった存在にたどり着くこととなる…という感じの本作、普通に面白かったので読んで欲しい。
正義の代償
「ジャスティス・リーグ:偽りの帝国」同様、スコット・スナイダーの「ジャスティス・リーグ」の続刊。本作ではシックス・ディメンションという新たな概念が登場し、そこで理想的な未来を手に入れた現在よりも少し歳をとったジャスティス・リーグが存在しており、ヴィランのいない理想郷である未来が待っていることが明らかとなる。
しかし、そんなシックス・ディメンションには隠された真実が存在していた。その真実を隠そうとするとある人物によって、スーパーマンは何も無い空間に囚られてしまう。スーパーマンは謎の異空間から脱出することができるのか?
ちなみに本作はスナイダー期の「ジャスティス・リーグ」の中では人気のエピソードとなっており、Twitterでも高評価のツイートを多数見かけているだけでなく、個人的にも一番楽しめたエピソードであった。アートを担当しているホルヘ・ヒメネスの日本人受けしやすい綺麗で少しアニメ的な絵柄のアートで繰り広げられる物語が非常に楽しめた。そういった点からもおすすめの一作となっている。マジ。
ラストナイト・オン・アース
NEW 52!の期間、バットマンのメインライターを担当していたスコット・スナイダー。そんなスナイダーが手がけるバットマンの最後の物語が本作である。
本作はスナイダーの「バットマン」シリーズの続編のような位置づけの作品ではあるのだが、「BLACK LABEL」シリーズであり、正史世界は決してこの未来には到達しないであるとされているからかは分からないが、ある日昏睡状態となったバットマンが目を覚ますと、バットマン不在のゴッサムどころかバットマン不在の地球全体の治安が最悪なものになっていた、というかなり思いきった作風となっているが、非常に楽しめる一作となっている。
さらに、本作のブルース・ウェインには、想像も出来ないような衝撃の真実が存在する。果たして、それかどんなものなのかを楽しんで欲しい。
「バットマン」だけでなく「ジャスティス・リーグ」のライターとしての経験も本作には活かされており、正史の続編らしさを楽しめる。つまり、スナイダーの作品を読めば読むだけ楽しめる作品なのだ。
余談だが、本作のバットマンのスーツは「DC REBIRTH」へと繋がる物語で、「NEW 52!」のバットマンの完結編である「バットマン:ブルーム」で初登場したグレーを基調としたスーツに裏地がパープルで、胸のバットシンボルに金の縁どりがされている個人的にお気に入りのものが採用されている。トム・キング以降のバットマンのコミックではパンツが付いているスーツに戻ってしまっているため、これは嬉しい。
ミスター・ミラクル
DCの神々的存在、「ニューゴッズ」の一人にしてダークサイドの義理の息子でありなから、ヒーローとしての道を選んだミスター・ミラクルとその妻、バルダの物語。本作は「ブラックレーベル」や「グラフィックノベル」といったそれらの括りには入っていない、通常のタイトルとして刊行された作品だが、これを正史の物語とするかあるいは別の世界の物語とするかは読み手の解釈次第だろう。個人的には正史とは異なる次元の物語だとは解釈しているが…
この物語の衝撃な点は、なんと言ってもその始まり方である。なんと、ミスターミラクルことスコットが自殺未遂を図ったところから物語が始まり、やがて目に見えているものが真実なのかはたまた嘘なのかがどんどん分からなくなっていく様は、読んでいても混乱すること間違いなし。
常に不穏な作風で、"これぞトム・キング"といったものをひしひしと感じさせる本作はなんと、コミック界におけるアカデミー賞のようなアイズナー賞を受賞した名作なのだ。
歴史に名を残した名作たるミスターミラクル、必読の一冊と言える。
ディシースト
本作も「ブラックレーベル」などと言った括りはないが、明らかに正史世界の物語ではないため、エルスワールド(DCにおけるIF世界の総称)を舞台とした作品であろう。
そんな本作のライターを務めたのは「インジャスティス」のコミック版や現在も連載されている「スーサイド・スクワッド」などで次々とキャラクターを殺すことで読者を震え上がらせているトム・テイラーである。本当に、人間の心を持ってない。DC界のトムにはキングしかりテイラーしかり、ろくなのがいない。
さて、ディシーストはどんな物語なのか?それは一言で表すと、「ゾンビ物」である。DCも遂にゾンビブームに乗っかったのである。
また、アメコミのゾンビ物といえば、「マーベルゾンビーズ」などが挙げられるかもしれない。ゾンビになる前の人格を残しながらも、ゾンビとして食人に勤しむその姿は見ていて辛いものがあるだろう。そんな方々に安心して欲しい。
ディシーストのゾンビは
正統派のゾンビだ。
ゾンビになる前の人格を残しておらず、ただ人を襲う怪物として存在しているのだ。そんなの読みたくないと思うかもしれないが、本作のゾンビの恐ろしいとこは別のところにある。それは…
感染経路
「ゾンビに噛まれてゾンビ化でしょ?」と思うかもしれない。確かに、本作ではゾンビに噛まれたり引っかかれたりしたヒーローがゾンビとなっている場面もあるが、第一波となる感染経路、それは
電子機器を通じた感染
誰の家にでもあるパソコンや、誰もが持っているスマートフォン、携帯用ゲーム機など、インターネットに繋がっている端末から、ウイルスが送られてくる。つまりは人をゾンビにするコンピュータウイルスのようなものである。これは恐ろしすぎる。近年、自分を含めた人々がスマホ中毒となっている状況から考えると感染者の数は計り知れない。そんな状況ならば、例えヒーローであろうが即座に感染してしまう。
さらに、「マーベルゾンビーズ」では感染後は特殊能力がゾンビ化によって失われた者も見受けられたが、「ディシースト」は違う。
ゾンビになっても特殊能力は
持ち越しなのである。
考えて見てほしい、光速の超人たる「フラッシュ」がゾンビになった場合のことを。超高速のスピードで人々をゾンビにしていくだろう。そうなった場合、誰が止めることが出来る?スーパーマンでも追いつけないような光速の男を誰が止められるというのだろうか?
(バリーが感染したとして、ウォリーくらいしか思い浮かばないけど、どっちも感染したらマジでやばいと感じる…なんならウォリーが感染した方がやばいね…ウォリーのが速いから…)
「ディシースト」に希望はない。
ただただ、絶望と懸命に戦い続けるヒーローたちの姿にエモーショナルを感じて、楽しんで欲しい。
ちなみに、大人気シリーズとなった「ディシースト」は続編がいくつも刊行されており、個人的にはその全てを邦訳しきって欲しいと思っている。
ドゥームズデイ・クロック
作品を紹介する前に、作品となっている正史世界の歴史についてご紹介。バリー・アレン/フラッシュが過去に遡り、宿敵のリバースフラッシュに母親が殺された出来事をなかったことにしたことで、正史世界のニューアースは最悪の時間軸、通称"フラッシュポイント"時間軸に変わり果てた。しかし、バリーとフラッシュポイント時間軸のバットマンことトーマス・ウェインらによって歴史は正しい形、つまりは元のニューアースに戻る…はずだった。
理由は不明だが、かつて開けてはいけないパンドラの箱を開けたことで、神々の怒りを買い、自分のせいで世界に混乱がもたらされるのを永遠に見せられるという罰を与えられているパンドラという謎の女性によってニューアースといくつかのマルチバースが融合された。
こうして、1986年から少しずつ形を変えながら存在してきた正史世界、ニューアースは元には戻らず、全く新しい歴史を辿っていった正史世界のプライムアースとなった。
フラッシュポイント時間軸から元の世界へと帰還したバリーはトーマスから託された手紙を渡すためにバットマンことブルース・ウェインに会いに行って事情を説明していた際の発言によると、バリーは世界は元通りになったと判断していた。
しかし実際には、ニューアースはプライムアースとなった影響でさまざまな出来事が変わっていたため、フラッシュポイント以前の記憶は失われてしまったと判断すべきだろう。
はい、というわけでみなさん、いかがでしたか?
読んでみたいなと思えるようなアメコミはありましたか?
まああろうがなかろうが関係ないですけどね。
ではまた